起業家インタビュー

女性の幸せは社会の幸せ。家族を失った体験から、59歳で臨床心理士の資格を取得。

2023年11月24日

オーダーメイドのカウンセラー。家族を失った体験から59歳で資格を取得した、臨床心理士・公認心理師 山本貴美子さんに起業のキッカケ、お仕事内容、ビジョンについてお話を伺いました。

臨床心理士とは?

臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。人(クライエント)にかかわり、人に影響を与える専門家。医師や教師と異なることは、あくまでもその人自身の固有な、いわばクライエントの数だけある、多種多様な価値観を尊重しつつ、その人の自己実現をお手伝いしようとする専門家です。(日本臨床心理士資格認定協会ホームページより抜粋)

「女性のためのこころの相談室」

例外として男性対象もありますが、基本的には女性のみを対象としています。女性を対象にしたのは、「女性が幸せに日々を暮らすことが、社会の幸せの指標になる」と考えているからです。考えてみると、ほとんどといってよいと思うのですが、日々の生活を下支えしているのは「女性たち」です。微力ですが、女性を力いっぱいサポートできればと思っています。
カウンセリングの方法は一つとして同じものはなく、謂わば<オーダーメイド>と考えています。オーダーメイドが可能、いわゆる「フリーハンド」が可能なのは<個人開業カウンセラー>です。それが、組織の一員である心理士となると、当然ですがそれは難しくなります。

心の平穏を取り戻すカウンセリング

様々な心の悩み、たとえば、家族や大切な人を亡くしてしまった人たちの心の痛みは計り知れません。そんな方々に自らの経験も踏まえて、ご相談に応じるのが山本さんの使命とも思える仕事です。
人間関係や過去の辛く苦しい体験はご本人だけで整理し解決するのは難しいことです。
精神的に様々なダメージを持つ人たちに寄り添い、心の平穏を取り戻すためのサポートをします。心理士としての専門的な知識とクライエント様との話を通して、解決への方向を共に探っていきます。

ご自身の経験を通して

山本さんは過去に息子さんを事故で亡くされました。
深い悲しみの底から、そのご経験を活かして同じような悩みを持つ人たちを支えたい想いで、資格を取得され活動されてきました。

その当時、どのような状況だったのでしょうか?

当時は社員研修の講師など、全く他の仕事をしていました。交通事故で息子を突然に喪うという衝撃に、仕事はもちろん人前に出ることさえも出来なくなってしまい、約2年間、いわゆる「社会からの引きこもり」状態の生活を続けていました。その間、徒歩での「四国八十八か所」巡りをするなど、日々「生きていく」ことに対して必死で抗い藻掻いていたように思います。そんな中、癌がみつかり急遽手術入院生活へ。
結局治療することなく日常の生活になんとか戻ったのですが、再び「これからを生きていかなければならない」ある種の絶望感に襲われたことを憶えています。
人は絶望を抱いては生きていけません。そんな折、友人の勧めもあり、<こんな状態の私を救うことが出来る自分になりたい>との想いが湧き出てきて、それが出来るかもしれない資格だと思い「臨床心理士」を目指し始めました。

59歳で臨床心理士に

目指し始めてからのゼロからの受験勉強、遠くに住む両親の介護などもあり、結局57歳で神戸の大学院に入学し、一から心理臨床を学びました。(修了後 59歳時に臨床心理士資格取得)
現場での実習、修士論文執筆においても、今振り返ると私にとっては相当に厳しい2年間の生活でしたね。
大学院を修了し、その半年後の「臨床心理士」資格試験になんとか合格できました。
今振り返ると、臨床心理士受験よりも大学院受験の方が私にとっては「狭き門」でした。それはどうしてなのかというと、心理臨床家としての適性があるかどうかを強く問われるのは大学院受験時だからだと思います。臨床心理士資格試験時には、大学院ですでに適正の有無をフルイにかけられているからです。

精神的なストレスが多い職業ではないですか?

目の前のクライエントの迷いや苦しさをしっかり聴きながら受け止めることが仕事、「ストレスフル」確かにそうなのかもしれませんが、臨床心理士は、それを「ストレス」とは思ってはいないと思います。「ストレス」ではなく、<クライエントのその瞬間の人生にかかわらせてもらってる>との思いの方が、少なくとも私は強いです。
とはいえ、敢えて言うと「負のシャワー」は浴びているとは思いますので、独自の気分転換法やリラックスする術は持っていた方が良いのかなとは思っています。

収入は安定していますか?

一般的に、臨床心理士は非常勤での勤務が多く、常に不安定な勤務状況にある心理士が多いのが現状です、私自身、資格取得した年齢の影響(ハンディ)は大きいと思います。
私自身の現在の状況は、非常勤での勤務先も年齢とともに減少し、個人開業の件数もなかなか増えず、収入としてはまだ厳しい状況ですが、これから広げていきたいと思っています。

未来に向けての抱負、ビジョン

当相談室の名称は「イニュニック」ですが、これはイヌイット語で「生命」という意味です。
写真家の(故)星野道夫さんの著書の中の『イニュニック』というタイトルから付けさせていただいています。星野さんの、すべての「生命」への向き合い方にも強く感銘を受けていて、それは心理臨床家としても充分共感するところであり、私の原点にある想いです。

自分に自信がもてない。職場の人間関係に悩んでいる。はじめての子育てがとても不安。
子どもにいつもイライラしている私、このままでいいのだろうか?
夫婦関係がうまくいっていない。親の介護で気持ちが落ち込みがち、大切な人を亡くしてとても落ち込んでいる、人に会うのもつらいなど。悩みや苦しみは、それぞれの環境や立場、こころの状態によって、ひとりひとり異なるものです。
こんなことで相談してよいのかな?と迷ったら、まずはお気軽にご相談いただきたいです。
今一人で抱えているあなたの悩みを聴かせてください。

これから起業を目指す人へ

自分自身が起業家という意識がないので申し訳ないのですが、自分がやりたいことを自由にやりたいために個人開業しました。これから起業を目指す方もご自身がやりたいことに挑戦してみるのも良いですね。

お客様の声

クライエント様の声を聞くことはほとんどありません。
カウンセリングは、まだまだ敷居が高いのでしょうか。
これは実際のお声なのですが、「これくらいのことで相談してもよいのでしょうか?」
「私よりもっと大変な人が通うところだと思っていました」とは来談後の感想です。
躊躇することなく、まずはお話に来ていただきたいです。悩み、苦しみ、抱えている大変な今の現実などなど、カウンセラーと一緒に相談しながら、少なくとも抱えている負荷をシェアしていく、それが「カウンセリング」ですね。

起業家紹介

山本貴美子さん
生年月日:1951年1月10日
開業年月日:2014年9月1日
相談室住所:大阪府 池田市 満寿美町11-3 B-305 
女性のためのこころの相談室「イニュニック(イヌイット語で生命という意味)」を運営。
所属:「安心の輪」子育てプロジェクトファシリテーター、
日本心理臨床学会、日本トラウマティック・ストレス学会、日本EMDR学会、日本自殺予防学会
これまでの勤務先:神戸大学医学部附属病院神経内科、あべのメンタルクリニック、箕面市立病院 こころのクリニック、日生病院 神経科 精神科、彩都友紘会病院 緩和ケア科、大阪市こころの健康センター、池田市女性相談、関西学院ハラスメント相談員、神戸松蔭女子学院大学 学生相談室、箕面自由学園 スクールカウンセラー、兵庫県キンダーカウンセラー(私立幼稚園子育て相談カウンセラー)など。病院領域・学校領域・福祉領域・産業領域・個人開業にて臨床をおこなう。

この記事を書いた人

金子 正美
アスリートフードマイスターとして、食と健康のサイトを運営。 これまでにアスリートの取材を数多くこなす。

Tags

Share

Ranking

ランキング