起業家コラム

起業にまつわる基礎知識

2024年2月19日

はじめての起業となると、何をどうやって始めればいいのか分からないといった方も少なくないと思います。 実際に起業をする前に知っておいていただきたい、起業にまつわる基礎知識を本記事でご紹介します。 会社設立に必要な手続きなどもお示ししますので是非ご参考になさってください。

個人事業か法人(会社設立)か

起業を行う形態として、会社を設立、または個人事業主としてスタート、通常はこのどちらかを選択することになります。事業の規模や性質などを考慮して決定することになると思います。個人事業主と同じような概念でフリーランスという言葉もありますが、これはあくまでもその働き方のスタイルを言うものであって法律上定義づけがなされているものではありません。ですので、本記事ではフリーランスも個人事業主に含まれるという前提でお話をさせていただきます。

個人と法人どちらを選択するのかの判断ですが、法人でなければならない、あるいは法人であることが明らかに有利であるなどの理由がないのであれば、まずは個人事業主としてスタートすることをオススメします。起業にあたっての書類作成や手続きの面倒が圧倒的に少ないことに加え、開業費用面でもほぼ「0円」で気軽にいつでもスタートできるというのがその理由です。後々事業が拡大し、税負担面などで法人とした方が有利になるようであれば、その段階で法人化(法人成り)して従前の事業を引き続き行うこともできます。

会社設立?法人化?と聞くと「法人」という言葉がピンとこない方も多いかもしれません。通常私たちは「人」として自らの人格に基づき物品を購入し、各種契約を行い、財産を所有します。一方、会社は単なる組織体に過ぎず、何もしなければそこに法律上の人格は認められません。私たちのように商行為や財産の所有などできないわけです。つまり、会社を作っただけでは、その会社の名前で口座を開くことや物を買うことなどの行為ができません。そこで、法律で定められた手続きを(会社設立の手続き)行うことによって、我々人と同様に法律上の権利や義務を持つ主体であることを認めてもらう必要があります。この処理を経て「法律上の人」、「法人」と言うことになります。会社は、商行為を行うにあたって人と同様に権利義務を持つ組織体(法人)とお考えいただければと思います。

個人事業主でスタートするには?

個人事業主として事業をスタートする具体的な方法ですが、基本的には、屋号(事業所名やお店の名前)を決め、「開業届」を税務署に提出するだけです。ちなみに、屋号は開業届を提出後に決定しても問題ありません。開業届の作成方法ですが、無料で開業届などを作成できる会計ソフトなどもありますので、こういったツールを利用して作成することができます。開業届とともに「青色申告承認申請書」を提出しておけば節税の恩恵を受けることができます。これも開業届と併せて提出しておきましょう。ただし、青色申告を選択すると複式簿記での会計記録がマストにはなりますが、会計ソフトを使用すれば簿記の知識がなくても平易に記帳作業が行えるはずです。

開業届については提出をしなくても罰則はなく、開業年の事業収支を翌年確定申告すればそれで個人事業主として登録されます。しかし、青色申告の恩恵として前述の節税に併せて、翌年以降3年間赤字を繰り越せることや、同居の配偶者等への給与を必要経費とすることができる(別途届け出が必要)というメリットもあります。決定した屋号での口座開設を認めてくれる銀行もあることもありますので(開業届の控えを必ず保管しておくこと)、開業をするならやはり必要な届け出を行っておく必要があります。

事業を開始しますと、日々の会計処理も行わなければなりませんし、売り上げなどに対する税の申告(確定申告)を行わなければならない立場にもなります。この申告作業も会計ソフトのガイドに沿って自分で行うことが可能です。インボイス事業者登録を選択すると消費税の申告も必要になってきますが、この消費税の処理についてはそれなりの知識がなければハードルが高いかもしれません。所得税は自分で処理をして、消費税の申告は税理士さんお願いするという形をとるのもいいでしょう。

会社設立をするには?

これは個人事業主としてスタートする場合も同じですが、まずは事業計画を立てます。自己資金以外に資金調達が必要な場合は、どのようにその資金を確保するかも検討しましょう。以下に会社設立のおおまかな流れを示します。

1.事業計画の策定

事業計画の立て方や計画書の作成方法などを指南するWebサイトなどを参考に策定できますが、専門家にアドバイスを求めることをオススメします。時間の節約になりますし、よりきめ細かい戦略の提案を得ることもできるでしょう。具体的には、商工会議所や起業をサポートする専門家に意見を求めることになります。銀行が専門家に繋いでくれるケースもありますね。起業に関連する補助金などもあり、どういったものがその事業に該当し、どんな手続きが必要なのかなどは、専門家の力を借りなければ難しいと思います。

2.基本的事項の決定

①会社形態、商号を決める
会社設立にあたり株式会社にするか合同会社にするかを決定します。株式会社は、原則として出資者たる株主と経営者の役割が分離(中小企業の実態は同一であることが大半)するのに対し、合同会社は出資者が経営者と同一になります。その他、経営者の呼称や定款認証の方法などの差異もあります。設立に掛かる費用は合同会社の方が安価にすみますので、小規模な事業体を中心に合同会社を選択するケースが増えてきているようです。一定規模の会社でも、株主総会などの設置が不要であり意思決定が迅速に行えることから、あえて合同会社を選択するケースもあります。

会社の形態が決まったら会社名を決定します。決定にあたっては、名前に「株式」、「合同会社」を付すること、公序良俗に反するものは不可など、その他諸々のルールがありますので注意しましょう。類似商号にも気を付けなければなりません。これについては国税庁の「法人番号検索サイト」などで簡易に調べることができます。

②会社の印鑑を作る
事業主、銀行印、社印(角印)などです。発送物などに使える、社名、所在地、電話番号などが記載されたスタンプを一緒に作成しておくと便利です。

③資本金を決める
半年間程度利益なしでも事業運営ができる額が一般的な相場にはなりますが、事業内容によってはこの相場と大きく異なる場合があります。対外的な信用力にも影響する部分ですので、迷うようであれば専門家にアドバイを求めましょう。

④役員報酬を決める
役員に支払われる報酬は「給与」とは言いません。役員報酬を経費とするためには税法上のルールがあり、一般の労働者のように自由なタイミングでその額を勝手に変更することは原則できません。この「役員」については簡単にご説明します。
先に、「法人は人同様の権利義務を持つ組織体」と言いましたが、その組織体である会社そのものには会社を動かすための「意思」が存在しません。そこで、意思決定を行うための「頭脳」が必要なわけですが、その役割を担うのが取締役などの役員です。労働者はその意思決定に基づいて動くという構図になります。役員に労災保険や雇用保険が適用されないのは、実働部隊ではない役員は「労働者」ではないという考えに基づくものです。

3.定款の作成と資本金の払込み

定款とは、会社を設立するにあたって必要な書類の一つで、組織運営に関する事項が記載れるものです。会社の憲法のようなものですので、株式会社の場合は公証役場で定款の記載が正しいものである旨の認証を受けなければなりません。(定款の作成自体は合同会社も必要です)定款は紙ベースでも構いませんが、電子定款という形であれば印紙代(4万円)は不要となります。作成方法ですが、Web上で簡単に作成できるクラウドサービスがあります。作成に続き登記申請に必要な書面も作成してくれるものもありますので、合同会社であれば、そのシステムを利用して定款作成から登記まで自分でできるかもしれません。株式会社の場合は基本的記載事項の記載に注意すべき点が多いことと定款の認証が必要なことから、登記申請と併せて専門家に依頼されることをオススメします。尚、相談・依頼をする専門家は司法書士になります。

定款の作成が終わったら資本金を振り込みます。登記完了前で法人口座が開設できてない段階ですので、とりあえず自分の個人口座に振り込むことになります。この際、後の登記申請に必要になりますので、
①通帳の表紙、
②1ページ目、
③資本金の振り込み内容が確認できるページのコピーを取っておきます。

4.登記申請を行う(相談すべき専門家は司法書士)

株式会社を設立する方は、時間に余裕があるか、以前に経験がある方でない限り、司法書士に依頼するのがベストです。この登記手続きに限らず、専門知識が必要になる各手続きなどは専門家に任せる事をお勧めします。専門家は単に手続きを行うだけではなく、事業を成功に導くための様々な有益な情報を与えてくれます。費用は掛かりますが、非常に頼りになるビジネスパートナーとなります。

会社設立後に必要な手続など

1.印鑑カードなどの交付を受ける

登記が完了しましたら、法務局で、
①印鑑カード
②印鑑証明(印鑑カード交付後)
③登記簿(履歴事項全部証明書)
の交付を受けておきましょう。
法人口座開設やその後の各種手続きなどで必要な場合がありますので、
必要な部数に余裕を持たせてまとめて数枚取得しておくと良いです。

2.税務署への届け出(相談すべき専門家は税理士)

法人設立届、青色申告の承認申請書、給与支払い事務所の開設届書(給与を支払うべき雇用がある場合)、源泉所得税の納期特例の申請書(給与支払人数が10人未満の場合)など税務署に提出します。また、法人住民税、事業税について、都道県税事務所及び市役所などに法人設立の届け出が必要になります。

日々発生する会社のお金のやり取りなどの疑問や困りごとは必ず起きてくることです。
また、個人事業の確定申告とは違い、法人決算はより詳細な専門知識が必要になります。
小規模なビジネスで簿記の知識がある方以外は、事業開始に合わせ税理士との契約をされる事をお勧めします。
税理士は「税」の専門家でお金周りのことは税理士に相談することになります。経営に関するアドバイスも行ってくれたりもしますので、事業を行っていく上で心強いパートナーになってくれるはずです。

3.労働・社会保険の手続き(相談すべき専門家は社会保険労務士)

①社会保険(手続き先は年金事務所)
社長1人会社であれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)のみの加入となります。
会社に社会保険を成立させ、加入者の資格取得手続きを行います。
保険料については、標準報酬等級というものがあり、その月額には幅がありますので、役員報酬を決定する際の参考にされるといいかもしれません。
注意事項が一点あります。保険料は加入(資格取得日)の翌月末日までに支払うことになりますが、被保険者本人分と会社負担分を合わせての納付となるのでそれなりの額になります。
納入告知書に記載された納付額を見て驚くことになるかもしれません。
社会保険料が毎月一定額掛かることを事前にしっかり理解しておきましょう。

②労災保険(手続きは先は労働基準監督署)
社員、パート、アルバイト、その雇用形態を問わず、労働者を一人でも雇用すれば会社に加入義務が発生します。
社会保険料とは違い年に一度申告納付をお行います。保険料は業種によって料率が定められ、例えば、飲食店であれば賃金総額の0.3%いった感じで計算されることになります。
具体的な手続き内容ですが、会社に労働保険を立てた後、概算の労災保険料を雇用保険料と併せて納付します。

③雇用保険(手続き先はハローワーク)
雇用する労働者(昼間学生以外)と31日以上の雇用契約で、所定労働時間が週20時間以上であれば加入条件を満たすことになります。(会社は加入させる義務が発生します)所定労働時間という言葉ですが、就業規則や雇用契約の際に定められる、その労働者が働くべき時間のことを言います。例えば、一日5時間の勤務で、月曜日から金曜日までの出勤の契約であれば、その方の所定労働時間は25時間になります。ちなみに、社会保険の加入要件は、所定労働時間(日数)が正社員の4分の3以上である者とされています。正社員の所定労働時間を週40時間としている会社が大半ですので、目安として週30時間以上勤務契約がある労働者は、パートであっても社会保険の加入義務があるこということになります。

まとめ

起業をするにあたっては、(特に法人設立の場合)行うべき事務や手続きが様々発生します。しかし、専門家の力を借りながら行ってみると案外簡単に事は進むものです。その他、知っておくべき起業の周辺知識は様々ありますが、起業に向けて一歩ずつ確実に前進していきましょう。

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