起業家コラム

専門家の選び方と付き合い方

2024年2月27日

起業を始めていざ会社を動かすにあたって最初のハードルになるのが、事業運営に欠かかすことができない各種の手続きや申請関係です。自分で行うこともできますが、専門家の協力を得ることによって時間や手間を大幅に省くことができます。本記事では、起業を成功させるため様々なサポートを行ってくれる専門家の仕事の内容、選び方、付き合い方についてなどをご紹介します。

専門家の種類と業務内容

起業後、税務関係や保険関係などの処理を行わなければいけません。それなりの専門知識を必要とし
手続きも面倒なものが多いですが、これを手助け(手続きを代行)をしてくれるのが士業と言われる専門家です。以下それぞれの士業が専門とする業務の内容を見ていきましょう。

・税理士

税務に関する業務を広く行ってくれます。とにかく事業にまつわるお金周りのことは税理士さんにお尋ねすることになりますので、必要な方は起業後、または起業と同時に関与してもらうことになるでしょう。節税などの税務に関することはもちろん、経営にまつわるアドバイスなども行ってくれます。顧問契約が基本になると思いますが、日々の記帳は自分で行って、決算のみ依頼するいとった契約をされる方もいます。ただし、会計処理は専門的な知識を要する場合が多く、取引の分量が多いことが予想される方は、当初から包括して税理士さんにお任せするのがベストな選択でしょう。税に関する疑問はとにかく頻繁に発生するものです。

・社会保険労務士

人に関する手続きや相談をカバーします。労働・社会保険の手続き、入退社、各種給付の申請、就業規則など、会社内で発生する人に関する問題は社労士さんにお任せすると安心です。労務管理上のトラブルが多くなっている昨今ですが、これを未然に防ぐ労務管理のアドバイスも行ってくれます。依頼のタイミングは、人を雇用する場合に顧問契約を検討される方向で良いと思います。必要時にスポットで契約でも構いません。給与計算を得意とする社労士もいますので、社会保険の随時改定や残業時間のチェック漏れなどのチェックも同時に行ってくれます。人事労務業務をアウトソーシングするというイメージです。

・行政書士

各官公庁に提出する書面の作成代行を行ってくれます。建設、運送、産廃、飲食など、扱える範囲は広く、許認可が必要な業務がある場合はまず行政書士さんにお尋ねされるのがいいでしょう。許認可に関しては難易度が高いものも多く、素人では到底扱えない内容もあります。また、会計記帳や各種契約の作成を得意とする行政書士さんもいます。必要が生じた際にスポットで依頼することが基本になると思いますが、お決まりの先生を見つけていただきますと何かと安心です。

・司法書士

登記に関する業務が中心になり、会社設立前にお世話になることが多いです。設立後においても、役員の変更や会社の移転や新規設置、新しい事業の立ち上げなど、依頼が必要になるケースも発生します。また、簡易裁判所管轄で請求額140万以下の民事事件の代理人となれる認定司法書士さんもおられます。行政書士同様に必要な際にスポットで依頼することになるでしょう。相続関係を得意とする司法書士も多数います。

・弁護士

言わずと知れた法律の専門家ですね。会社設立前から設立後に至るまで、リーガルチェックが必要を思われる場面がそれなりにあると思います。そんなときの相談先はやはり弁護士さんに相談することになります。
当初は事案の発生ごとに依頼をするといったお付き合いになりますが、業務内容や規模によっては顧問契約という選択を検討することになります。最近は、契約内容をカスタマイズしてくれる弁護士事務所もあるので、会社に顧問弁護士をつけるハードルが低くなってきているように感じます。

専門家の選び方

各士業の先生の選び方ですが、信頼できる方などから紹介をいただくのが失敗は少ないです。しかし、この場合ですと、紹介いただいた先生にピンとこない場合でも、「気に入りませんでした」とはなかなか言いづらいのが難点ではあります。紹介していただいた先生との相性もありますので、検討が必要な場合もあり得る事です。

専門家の紹介を組織的に行う団体や、特定の契約に付随するサービスとして士業の紹介を行う機関もあります。こういった場合は遠慮のない選定ができそうです。ただし、様々な専門家が登録されていると思われますので、開業後間もないなど実務経験が少ない専門家と繋がる可能性があることは認識しておくべきでしょう。

専門家として基本的な実務能力を備えているということを前提としますが、専門家選びの最も重視すべきポイントは、その先生の「人となり」です。ご自身との「相性」も重要なポイントになりますね。

会社を経営していますと、様々な問題やイレギュラーな事案が日常的に発生してきます。このような場合に顧問の先生に相談しアドバイスをいただけるのは心強いですね。

その先生の人となりの評価については、話し方や所作などで感じ取れるところも多いと思います。顧客を多く抱える先生は1日中どの時間帯でもたいてい忙しくしています。そんな状態であっても、常に丁寧な対応をしてくれる先生も希有な存在かもしれませんが、少なくともプロとして誠実に対応してくれる先生を選ぶべきです。

専門家を選ぶポイント

では、紹介によらず自分に合いそうな専門家をどのように探せばよいのか?ですが、ネットなどで検索をして自力で探してみることをオススメします。選ぶ際の重要なポイントを以下に列記しますので参考にしてみてください。

1.事務所の理念や特徴を知る

事務所サイトには、何を大切にし、どんなサービスを提供し、どのようなスタンスで顧客に接しているのかが大抵記載されています。全ての事務所が記載通りの内容で業務運営を行っているとは限りませんが、少なくとも記載される方針で事業運営を行う意思を持っているはずです。特にその事務所の理念を知ることはとても重要です。できるだけ丁寧に読んでご自身の希望を満たしてくれそうな事務所を探しましょう。顧客たる皆さんに、一定の敬意を払ってお付き合いをしてくれそうな事務所であることが望まれます。

2.所長(代表者)のプロフィールを確認する

所長のプロフィールを掲載する事務所は少ないかも知れませんが、記載の内容が人柄を推測する手がかりになることもあります。経歴を見ればどんな人生を歩んできた方なのか分かりますし、趣味が記載されていればどんなことが好きなのかを知ることもできます。顧客との打ち合わせ時、仕事の話はそこそこにして、共通の趣味の話を終始といった士業の先生もおられます。それでお互いの距離がぐっと近づき、信頼関係がより深まるということもあります。プロフィールの内容から、「この人はちょっと・・・」という印象を受ける場合もあるかもしれません。相性も専門家選びの非常に重要な要素になります。大きな事務所になりますと、日々の業務は別のスタッフが担当することになるのが一般的ではあります。この場合は担当スタッフをその事務所の代表する者としてシビアに見ていくといいでしょう。

3.無料相談を活用する

事務所によっては、初回無料相談や1時間無料相談対応といったサービスを行っている事務所もあります。気になる事務所があればこういったサービスを積極的に利用してみましょう。実際に繋がってみて分かることは非常に多いです。例えば接客対応ですが、電話やメールを取り次ぐ方の言葉遣いや態度などもしっかりチェックしておきたい事項の一つです。

無料対応とは言いましても、レスポンスや納品品質も気に掛けておきたいところです。自分の欲しいタイミングや内容を満足させてくれるかどうか試してみましょう。ただし、あくまでもご自身はサービスを受ける側であることを忘れてはいけません。皆さんの言動もしっかり見られていることを認識しつつ、サービスを提供してくれる相手方にも十分な敬意を払うことが大切です。

専門家との付き合い方

さて、専門家と契約を締結すればお付き合いが開始されることになります。
契約後はどのように先生方とお付き合いをしていけばいいのでしょうか。

まず、会社の状態を正直に伝えていただくことです。社内の事情を包み隠さず話すことは意外と難しいことです。恥ずかしいといった理由などで言い辛いこともあるでしょう。もちろん、その専門家にとって不要と言える情報は与えなくても構いませんが、少なくとも問われたことについては過不足なく伝えることをマストとしましょう。言わないことで会社が不利益を被ることもあるかもしれません。専門家は多くの事例に接し、数多くの事案を経験してきています。告げることにためらいを感じることであっても、それについて何か特別な感情を抱くことはありません。

併せて、契約時に示される業務の範囲の他に何か希望することがあればお願いしてみることです。また、契約の内容に変更を希望する箇所があれば、その旨を伝えてみるのもいいでしょう。追加サービスを希望する場合は、その部分を上乗せして報酬を支払うことになります。逆に、不要と思えるサービスを外すこともできます。例えば、月一回の訪問を契約内容にしている場合に定期の訪問は原則不要とし、必要な場合のみとすることなどです。皆さんの事情によって契約内容を柔軟にカスタマイズしていただけるはずです。

その他伝えるべきことは、自分の会社を将来どのようにしたいのかを正確に知ってもらうことも重要です。専門家はご自身が決定した方針に沿って様々なアドバイスを行ってくれます。これが不正確な伝達となりますと、専門家は誤った情報に基づいて業務を行うことにもなります。事業を運営していきますと、方針転換を余儀なくされ、あるいは検討を要する場面も発生するかもしれませんが、そういった場合は直ちに相談をすることです。

それと細かい話にはなりますが、時間外や緊急時の対応の可否や連絡手段を明確に確認しおくことも大切です。事務所の業務時間外に緊急事態が発生した場合や、直ちに返答が欲しい事案の発生などは当たり前に発生してきます。こういった場合に事務所としてどのように対応をしてもらえるのかを確認しておきましょう。受けた回答の対応で皆さんの会社が受容できるのかどうかを、あらゆるケースを想定して考えてみましょう。

些末なことにはなりますが最後に一点。お中元、お歳暮の品は送った方がいいのか?ですが、これはどちらでも構いません。感謝の意が示される行為ですので、受けとる事務所は大抵嬉しいものです。そういった気遣いは無用とする事務所もありますが、それは単に事務所ポリシーとして遠慮しているだけのことであると理解しましょう。気を悪くすることなどありません。

まとめ

顧問契約を締結しますと毎月顧問料が発生してくることになります。この顧問料が会社の経営を大きく圧迫するころがあってはいけませんが、専門家はその費用以上の仕事を行ってくれるはずです。
専門家と上手く付き合うことで、事業を発展・拡大させていきましょう。

この記事を書いた人

たみお
行政書士・社会保険労務士。士業事務所を営む傍ら人事労務コンサルタント会社を運営。人材マネジメントを得意とする。

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