起業家コラム

これからの時代に求められる起業家像とは

2024年2月27日

「起業」と聞いて、皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。大きな夢や高い目標を持ち、特別なスキルを持っていなければ起業はできない。そう思っている方もいるかと思います。この記事では、時代とともに変化してきた仕事の価値観やビジネスのトレンドに触れながら、これからの時代に求められる起業家像について説明します。この記事を読めば、起業がもっと身近に感じられ、誰でも自分のペースで起業への一歩を踏み出すことができるようになります。ぜひ最後まで読んでいただき、自分の将来について見つめ直すきっかけになればと思います。

起業を取り巻く環境

起業とは「新しい製品・サービスの提供を開始する」こと

皆さんは「起業」に対してどのようなイメージを持っているでしょうか?急にこのような質問を投げかけられても難しいと思います。そこでまずは、起業の定義について改めて考えてみましょう。

起業とは、その名の通り「業を起こす」ことです。その形態は問わず、株式会社、合同会社、個人事業主など、何でも構いません。とにかく言えるのは、世の中に向けた新しい製品・サービスを考え、それらの提供を開始すること。その条件さえ満たせば、それは「起業」と呼ぶことができます。

世の中の働き手における起業家の割合

では、世の中に「起業家」たちはどれぐらい存在するのでしょうか?
総務省の「就業構造基本調査(2017年度)」によると、世の中で社会人として働く人のうち、起業家の割合は16.0%です。10人に2人いるかどうか。
つまり、日本における社会人の8割以上は、企業に雇用されている社員ということです。

皆さんの周りではいかがでしょうか。
私は社会人経験が10年ほどありますが、その間に同僚や友人のキャリアチェンジを数多く目にしてきました。そして、そのほとんどが別の企業への転職でした。

ざっと30人ほど思い浮かべましたが、そのうち起業をしているのは4人。先ほど紹介した起業家の割合16.0%とほぼ同程度です。
日本においては、「仕事=企業に雇用される」というイメージが強いのではないでしょうか。

そこで、世界の国々と日本を比較してみます。
世界の多くの国が参加する「Global Entrepreneurship Monitor」(通称GEM調査)によれば、「周囲に起業家がいる」、「周囲に起業に有利な機会がある」、「起業するために必要な知識、能力、経験がある」の3つすべてに対して「いいえ」と答えた人を起業無関心者とした場合、日本はその割合が75%に上りました。

一方で、アメリカ、中国、ヨーロッパの各国は20~40%となっています。そのため、国際レベルで比較しても、日本は起業に対して関心の薄い国だと言えます。

起業に対する先入観

ではなぜここまで日本の起業に対する関心度が低いのでしょうか。それは、起業に対する先入観が影響していると考えられます。

ではここで改めて、冒頭の質問を投げかけてみましょう。「起業」と聞いてどのようなイメージを持つでしょうか?収入が不安定、福利厚生がない、画期的で革新的なアイデアが必要、リスクを取る必要がある…などネガティブなイメージを持つ人も多いのではないかと思います。

ですが、見方を変えれば、ポジティブに捉えられる一面もあります。
収入が不安定ということは、事業の成長次第でいくらでも収入を伸ばしていくことができますし、画期的なアイデアでなくとも、「人の役に立つこと」であれば事業になり得る可能性もあります。また、副業でスタートすれば、リスクを最小限に抑えられます。

このように、自分の中にある先入観と向き合うことで、起業のハードルを下げることができ、「自分にも起業できるかもしれない」と考えられるようになります。

時代とともに変わる仕事の価値観

先入観(=価値観)は、時代とともに変化してきており、年代によって様々な特徴がある事が分かっています。そこで次に、仕事に対する価値観・考え方を世代別に整理していきます。

1.ベビーブーマー(団塊)世代 (1946年〜1964年頃)

戦後の高度経済成長やバブル期を経験した世代。
年功序列や終身雇用が当たり前で、働けば賃金、投資すれば大金が手に入るという時代を生きてきました。
起業に対してはリスクが高いと感じており、安定した雇用を求める傾向があります。

2.X世代 (1965年〜1980年頃)

バブル崩壊やリーマンショックに伴う就職氷河期を経験した世代。年功序列や終身雇用が崩壊し、非正規雇用や転職が一般的になってきた時代。
起業に対してリスクは感じているものの、柔軟な働き方を重視する傾向があります。

3.ミレニアル世代 (1981年〜1996年頃)

長期的なデフレや経済不安とともに成長してきたため、給与や安定だけでなく自分自身の成長やキャリアアップを優先する世代。
仕事に対する価値観が多様化しており、働く意義を満たしたり社会へ貢献できるものであれば起業も選択肢に入る傾向があります。

4.Z世代 (1997年〜2012年頃)

デジタルテクノロジーの進化とともに成長してきた世代。
社会問題や環境問題への関心も高く、多様性への理解があります。
東日本大震災や新型コロナウイルスなどの不安定な社会情勢のなかで成長してきたために、安定志向が強いです。
高い情報感度を持ち、安定できる様々な働き方を模索しています。一つの会社で勤め上げる、という考えはあまりありません。

このように、一言で価値観といっても、生きてきた時代背景によって様々です。その特徴を知っておくことで、自身が起業し新たな製品やサービスを提供する際に役に立つでしょう。

時代とともに変わるビジネスのトレンド

製品・サービス開発におけるマーケティングとその歴史

一方、製品やサービスを考える上で必要不可欠なのが、マーケティングです。その歴史は非常に長く、始まりは1900年代と言われています。マーケティングの目的は、顧客のニーズを正確に把握し、その期待に応えられる製品・サービスを開発することです。

マーケティングも、時代とともに変化をし続けています。この考え方が始まった1900年代は、大量生産・大量消費の時代で、モノが中心の考え方でした。いかにコストを抑え、多くの顧客に製品を届けるかが重要視されていました。

その後、1960年代近くまで長く続いた大量生産と消費によって、世の中はモノで溢れかえりました。そのため、単純にモノが良ければ売れる、という時代ではなくなりました。モノを使う消費者の満足に応えられる製品を開発することに、重きが置かれていました。

1990年代以降、インターネットの急激な普及により、それまで情報を受け取るだけの存在だった消費者が、自ら情報を発信できるようになりました。同時に、製品の機能・性能の優劣が付きづらくなっていきました。製品自体の価値だけでなく、その商品を購入することで自分がどのような価値を受け取ることができるか、ということについて重要視されるようになりました。

そして現在、スマートフォンやソーシャルメディアなど、デジタル技術の台頭により、マーケティングの手法も大きく変化しました。

デジタルマーケティングの新潮流:ソーシャルメディアとインフルエンサーの役割

現在、世の中ではデジタルマーケティングが主流です。一般的には、メール、Webサイト、オウンドメディア、SNSなどを通じて顧客での情報発信を行い、それぞれの興味関心に応じた製品・サービスの購入へとつなげていくことが目的です。

特に近年では、ソーシャルメディアを活用したマーケティングが増えています。その理由は、顧客との接点が多いためです。

今や、情報収集にソーシャルメディアは欠かせません。鮮度の高い情報をいち早く入手できるという特徴から、X (旧Twitter)、Instagram、Tiktokなどを通じて調べものをする人が増えています。(2021年生活者年末ネット調査/野村総合研究所)

そして、そのソーシャルメディア上では、インフルエンサーと呼ばれるクリエイターたちが数多く活躍しています。そんなインフルエンサーたちの影響力を使って、さらに効果的なマーケティングを行う方法が注目されています。

これは、かつてテレビで芸能人が宣伝を行っていた方法と似ていますが、大きく異なるのはインフルエンサーとユーザー(顧客)の関係性の強さです。

テレビで活躍する芸能人の場合、たとえ自分がその人のファンであっても、受け取る情報は一方的であり、芸能人とファンとの距離は遠く感じられます。芸能人はテレビの中の存在であり、自分とは違う世界に住んでいるというイメージを持つ方も多いかと思います。

一方インフルエンサーは、日常的にファン(フォロワー)とコミュニケーションを取っています。そのため、特別な存在でありながら、ファンにとっても非常に近い存在であり、同じ世界を生きているという感覚を持ちやすくなります。これがソーシャルメディアの強みでもあります。

この関係性を活用し、インフルエンサーを活用したマーケティングを行うことで、より顧客からの購入の可能性を高めていくことができます。

持続可能なビジネスモデル:環境と社会への配慮が求められる時代

顧客のニーズを把握することも大切ですが、社会課題の解決に繋げていくストーリー性も重要です。

2015年、国連気候変動枠組み条約締約国会議(CoP21)にて、世界的に温室効果ガスの削減に関する取り決めが示され、「平均気温上昇を2℃以内とする」目標が掲げられました。

それから10年近く経過しますが、「もう引き返せないところまで来ている」ということを実感する場面が増えてきました。

私が小さい頃、夏の平均気温は30℃程度でした。いわゆる「真夏日」です。それが現在、真夏の最高気温は「猛暑日」である35℃を軽く超え、外出することすら難しくなってきています。

日本国内でも異常気象が増え、子どもたちの遊び場がどんどん少なくなってきているのを実感しています。
改めて、私たち一人一人が、自分にできることをきちんと考え、小さな一歩でも着実に実行していくことが大切だと思います。

それは、ビジネスモデルを考える際にも同様です。似たような製品・サービスがあった場合、価格にもよりますが、顧客はより環境に配慮したものを選ぶ傾向があります。
(2020年サステナビリティ/エシカル消費に関する買い物意識調査/インテージ)

今後はより、環境に配慮した製品やサービスが重視されると考えられます。

また、自分一人が良くなろう、ではなく、社会全体を良くしていこうという考え方も求められます。

近年、ソーシャルビジネスという言葉を耳にすることが増えてきました。通常、企業は利益の追求を目的としていますが、ソーシャルビジネスでは社会課題の解決を目的としています。

このような課題は、ボランティアやNPO法人など、非営利目的で解決することが一般的でした。しかし、それらの活動の多くは寄付によって成り立っているため、持続的に活動していくことが難しいという一面もあります。

また、世の中には社会課題が多く存在します。これまでは、行政機関がそれらの解決に向けた取り組みを進めてきました。しかし、行政側も人員不足などの課題から取り組みを断念するケースが出てきています。

そこで、そのような社会課題を解決することを目的とし、かつ事業収益を元手に運営を行うソーシャルビジネスが注目されています。

何か人のためになりたい、と思っている方は、社会課題に目を向けてみるのも良いかもしれません。

これからの時代に求められる起業家像

リモートワーク時代の起業家精神:柔軟性と適応力の必要性

外部環境の変化で、それまでの常識が一気に覆されてしまうことがあります。2020年の新型コロナウイルスは、皆さんの中でも記憶に新しいかと思います。

変わらざるを得ない状況に追い込まれたとき、大きな変化が生まれます。そのような変化に対しどう柔軟に適応していくかが重要です。

現在、インターネットが当たり前の社会になっています。そのため、ソーシャルメディアなどを通じ、常に最新の情報を取りに行く姿勢がとても大切です。

コロナ後の起業家:リモートワークとオンラインビジネスの台頭

前述した新型コロナウイルスの影響で、それまでも少しずつ増えてきていたリモートワークやオンラインビジネス等が大きく進みました。

働き方の多様化も進んでいると感じます。かつて私が勤めていた企業では、週5日の出勤が当たり前でした。

オンライン会議ツール等の導入は進んでいたものの、実践の場は少なく、対面での会議が日常の毎日。リモートワークなど頭の片隅にもないような生活を続けていました。

それが、コロナ禍の影響で状況が一変。一時は完全在宅勤務にまでなりました。オンラインツールの使い方をはじめ、どう活用すれば効率的・効果的に業務を進めることができるのか、誰も分かりません。

見よう見まねでオンライン会議や社内報告会の回数を重ね、その都度出てきた意見を取り入れながら、少しずつ適応していきました。

そして現在では、上司の承認さえ得られれば、たとえ週5日リモートワークでも問題ないという規則へ変わっています。

ここでご紹介した内容は一例ですが、今後もオンラインビジネスは加速していくと考えられます。

デジタル時代の起業家:テクノロジーと創造性の融合

関東・関西の大学生300名にアンケートを取ったところ、4割以上が起業に興味があると答えました。(2023年起業に関するアンケート/THE SEED)

加えて、Z世代らしくYoutubeやソーシャルメディアから起業に興味を持った学生が多く、起業に関する情報収集にもソーシャルメディアやWebコンテンツを活用していることが分かりました。

また、起業についてのイメージを尋ねると、失敗したときのリスクが大きいことや、資金調達の難しさなどネガティブなイメージを挙げる学生が多い一方で、自分の経験や能力を生かせる、自分の価値が上がる、社会貢献ができる、などポジティブなイメージを持っている学生も一定数いました。

よく、自分の夢や目標は公言した方が良い、と言われます。それは、周りの人々に対して自身の興味関心や強みを知ってもらうことで、何かあった時に「力になってくれそうだ」と声をかけてもらいやすくなることへ繋がります。

かつては、それを対面コミュニケーションで行ってきました。現在はソーシャルメディアの力により、個人の発信が多くの人々の共感を呼び、大きなムーブメントを生み出すこともあります。

デジタルテクノロジーとともに成長してきたZ世代だからこそ、ソーシャルメディアを通じて積極的な発信を行い、より良い社会を実現するための起業に繋げてもらえたらと思います。

まとめ

これから起業を考えている人、また起業について情報収集を行っている人へ向けて、時代とともに変化してきた仕事の価値観やビジネスのトレンド、そしてこれからの時代に求められる起業家像についてご紹介してきました。

起業と聞くと難しく感じるかもしれませんが、「誰かの役に立ちたい」「世の中に貢献したい」という気持ちを持って行動すれば、必ず誰かが応援してくれることでしょう。

個の力で世の中を動かすことができる時代です。キャリアの選択肢に「起業」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

naoto
企業研究員、自治体職員を経てフリーランスへ。Webライティング、Webページ制作のほか、バックオフィス系業務全般を対応する個人事業主。

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